「異人たちとの夏」を観劇
この作品は原作からしてしっかりしているのです。昭和62年に山田太一によって小説「異人たちとの夏」(新潮社)が書かれ、第一回山本周五郎賞を受賞しました。そして翌年には名監督・大林宣彦により映画化され、なんと日本アカデミー賞・毎日映画コンクール賞など、各映画賞を独占したという傑作なのです。
「無償の愛をもとめて」・・・
「勝ち組」という言葉にこだわり、経済的な成功と物質面での豊かさだけに人生の尺度を持たせ、「結婚」ですら契約の一部であるから白紙撤回もまかり通る。自分の子供ですら離れていけば歩み寄ろうとはせず、コミュニケーションが取れなくなったら目をつぶるだけ。「愛」は交わすものでなく、金でその都度「量り売り」で買えば済む。友人すらいない・・・山田太一が書き下ろしてから20年以上の時を超えた現在も、主人公が自らを置いていた境遇にすごくだぶる人たちが社会に当然のごとく生活しているのではないでしょうか。
「異空間への誘い」・・・
脚本家として成功しているが、そんな無機質で慈愛からほど遠い主人公が、幼い頃死別したはずの父母とそっくりな夫婦、いや「紛れもない父母」に出逢う。並行して、急に現れた年下の女性との深まる愛。彼は、夫婦との交流の中で無償の愛を発見していく。恋人との恋愛の中でも「愛おしさ」の充足感を知る。しかし、彼に大切なことを教えてくれた人たちは・・・「異人」であった。そして、別れ。
・・・平たく言うと「霊界との交流」が本作の題材であり、ちょっとオカルティックなファンタジーなので、お盆を前にして、すごく夏らしい旬な作品です。また、最近「2012年アセンション」(坂本正道の著書はふーんとうなずく部分もあるのですが・・・??)などの話題で、それこそ「異人」が一部でブームとなっていますしね。それはそれとして、すごく夏の演出がなされていますので、7月公演にぴったりでした。
完成度は・・・バツグン!!前から5列目で見られたこともあり、「うわ、椎名桔平が近い!」という部分でまず感動。椎名桔平は舞台役者として完璧に思えます。一挙手一投足、目の語り、手先の微細な震えまで、凄すぎます。それと、「父」役の甲本雅裕が言葉に形容しにくいほど素晴らしかった。池脇千鶴もどっしりとした演技ですね~。そして、内田有紀・・・厳しい稽古によってなのか、やせている彼女がさらにゲッソリした面立ちで、また血色のない薄化粧が役作りに功を奏していました。演技もまだまだ延びていきそうな素質を感じさせてくれました。彼女の「死ぬんじゃなかった」「あと3日死ないでいれば・・」にグサッとやられました。しかしまあ、あんな美人の「異人」なら、来て欲しいよなあ、少しは生気を吸い取ってもらったっていいよ、と男なら誰しも思うでしょうよ。有紀ちゃん、また舞台でいい役取ってくださいね。
主人公が最後に立ち上がって空を見上げて「別れ」を告げた時の瞳には「慈愛」が充ち満ちていました。まさにお釈迦様の「蓮は泥の中に咲く・・・きれいな水の中では蓮は美しい花を咲かせることが出来ない。人間も逆境を経験してこそその先に花が咲いて実が成る」という教えを思い出しました。もしくは、浅草での出逢いだったから、観音様の粋な計らいだったのかな。
この実力派キャスト勢揃いの珠玉の舞台は、シアタークリエで25日まで上演していますが、舞台に足を運べない方は、DVDで20年前の映画を鑑賞してみてはいかがですか。(夏だからどこかのBS局でも放映しそうなものですが。但し、テイストは全く異なる。個人的には舞台の方が100倍いいです!) そして、観賞後は絶対「すき焼き」が食べたくなりますよね、できれば大切な家族や恋人と。
それと「浅草と人情味」が大きな要素だったし、同じく主人公が幼くして両親を亡くしたことも重なるので、家に帰ってから、録画して残しておいたホームドラマ「あんどーなつ」を見ました。ちょうど第5話はナツが「異人」の女性と遭遇する話だから、なんとなく関連があっておもしろかったです。あのドラマ、人情味熱い浅草の人々の交流が良かったよな~。また1話から見直そうかな。


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